博物館ノート

ドイツ製足踏式押印機

収蔵品

これはドイツ製足踏式押印機(図1)で、当館所蔵の自動押印機の中では最も古いものです。明治17(1884)年7月、当時駅逓総官であった野村靖が欧州に出張した際に公的に購入したものと伝えられています。
19世紀後半には、各国とも近代郵便制度が社会に浸透したため差し出される郵便物が増加し、手作業による押印作業は困難を極めるようになりました。そのため、各国とも押印機の研究開発に努め、ドイツで開発されたのがこの足踏式押印機でした。これは足踏式の活版印刷機に似た仕組みとなっています。
このドイツ製足踏式押印機は東京郵便局で試用されましたが、1分間に100通前後しか押印できなかったようです。これは日本の封筒の紙質がこの機械の性能に合わなかったためで、残念ながらこの押印機の導入は幻となりました。そのため、日本における自動押印機が実用化されるのは、明治44(1911)年に登場する林式自動押印機(図2)まで待たねばなりませんでした。

図1 足踏式押印機
図1 足踏式押印機

足踏式押印機の押印部分
足踏式押印機の押印部分

図2 林式自動押印機
図2 林式自動押印機